健康情報

電気刺激で治療  ──病気で落ちた視力回復 筋力強化しリハビリ──

体に微弱な電気を流して運動機能や視力を回復する研究が相次いでいる。東京大学などは頭部に電気刺激を加えて足の筋力を高めることに成功、大阪大学は網膜に電気を流して病気で低下した視力を回復できた。リハビリや治療の新方法として普及が期待される。
 東大の渡辺克己准教授らと国立精神・神経センターは頭に電極付きの布を置いて微弱な電流を流したところ、足の指の筋力を2割程度強くできた。体を動かす脳の神経細胞を活発にした。手術などは必要なく携帯型の小型装置で治療できる。脳血管障害の後遺症やパーキンソン病の患者のリハビリなどとして年内にも臨床研究を始める。
 阪大の不二門尚教授らはコンタクトレンズ型の電極を開発。神経系に栄養を運ぶ血管がつまり視力が低下する「虚血性視神経症」の患者18人の網膜を微弱な電気で刺激したところ、半数以上で視力が高まった。そのうち半数は0.3の視力が0・6以上になるなど大幅に回復した。神経に栄養を与える因子の分泌を促すとともに神経を活性化した。年内にも国の先進医療制度を申請し、他施設への普及を目指す。
2009年6月22日  日本経済新聞



統合失調症 大量投薬見直し 1剤で適量 意欲回復

 統合失調症になった30歳代の女性は、茨城県の精神科医院に入院中、複数の薬を大量に処方され、ほとんどベッドで横になっていた。主治医だった河合伸念さん(現・筑波大精神神経科講師)が本人の同意を得て薬の量を減らし、「第2世代」の薬へ切り替えてゆくと、他の患者と歓談することが増えた。幻聴などの症状がぶり返す時期もあったが、薬の減量開始から2年半で退院。症状は残るものの、社会復帰施設を経て自宅に戻り、家族と元気に暮らしている。                     (大阪科学部 原昌平)

 統合失調症は、約100人に1人という頻度の高い病気だ。原因は不明だが、ストレスや不眠をきっかけに発症することが多い。
 症状には、幻聴が聞こえる、妄想にとらわれるといった「陽性症状」のほか、他者との交流や感情が乏しくなる「陰性症状」、順序立てた作業ができない、ちょっとしたことが覚えられない「認知機能障害」などがある。
 薬物療法が進み、今は発症者の3割が完全に回復、3〜4割は服薬しながら社会生活が可能になる。だが、長期入院も多く、精神科の入院患者の6割近くを占めている。
 主力になる薬は「抗精神病薬」。患者の脳では「ドパミン」という物質による信号伝達が過剰になっていると考えられており、それを抑える作用を持つ。
 1950年代から「第1世代」の薬が使われてきたが、手足が震える、筋肉が硬直する、じっとしていられないなど「錐体外路症状」と呼ばれる副作用が出やすい。それを抑える薬を使うと、便秘などの副作用が増え、下痢も必要になる。さらに睡眠薬なども加え、10種類以上を処方されてきた人も珍しくない。

「第2世代」登場

 そうした副作用が比較的少ないのが「第2世代」の抗精神病薬だ。日本では96年から発売され、現在は5種類の薬が使える。効果や副作用を見極めるため、1種類だけ処方するのが原則とされる。
 ところが、日本独特の「多剤大量療法」が今なお幅をきかせている。薬剤師の研究会が昨年10月時点で全国61病院に入院中の患者9325人の処方を調べると、1剤だけの処方は3割弱にすぎず、第2世代と第1世代の薬の併用も多かった。これでは副作用を減らせない。
 東京女子医大神経精神科教授の石郷岡純さんは「陽性症状をたたくという対症療法の感覚で薬を使う医師が多い。しかも効果が出ない時に薬を替えるのでなく、別の薬を追加するから多剤大量になる」と指摘する。
 多剤大量療法からの切り替えは、①まず従来の薬の量を減らす②第2世代の薬に替える③1剤にして最適な量まで減らす――といった段階を踏み、症状の変化に気を配りながら、ゆっくり進める。

23人中20人で成功

 筑波大講師の河合さんは、2003年から3年間、勤務していた茨城県の民間病院で切り替えに取り組み、多剤大量処方が1年以上続いていた患者23人のうち、20人で成功した。「失敗を恐れず、一時的な症状の悪化にひるまず、薬を減らすことを試みるべきだ」と強調する。
 ただ、第2世代でも量が多いと従来と同様の副作用が出るほか、血糖値が上がることがあり、注意は必要だ、
 「患者が元気になる可能性」を持つ薬の処方の転換。慢性期の患者の陰性症状とされてきた例には、第1世代の薬の副作用がかなりある、という見方もある。社会復帰を促進する意味でも注目したい。
2007年7月31日  静岡新聞



知らないと損する 高額療養費制度

申請で一定額以上還付
「世帯合算」などで増額も

 高額な医療費がかかったとき、一定額以上を公的健康保険が還付してくれる「高額療養費」制度。使いやすいように四月に手続きを一部変更してから半年強が過ぎたが、いまだに制度の存在自体を知らない人も多く、申請漏れが多発している可能性がある。特に世帯の医療費を合算して払い戻す特例などは、あまり知られていないようだ。

 「もっと早く知っていれば・・・・・・」と嘆くのは香川県の佐々木和彦さん(仮名、45歳)。五年前に直腸がんの手術で入院。二十数万円の医療費を支払った。高額療養費の申請をすれば、十数万円が還付されたはずだった。「最近この制度を知って社会保険事務所に問い合わせたが、時効だと聞いてあきらめた」

申請の時効は2年

 高額療養制度とは、所得などによって自己負担限度額を定め、窓口で支払った金額との差額を還付するもの(図A、B、C)。患者一人ごと、一ヵ月ごと、診療報酬明細書(レセプト)ごとに計算する。時効は二年。サラリーマンに扶養されている妻は夫の所得区分が適用される。
 計算の仕組みはこうだ。例えば七十歳未満の人の場合、通常窓口負担は三割。このため百万円の医療費がかかればまず三十万円を病院で払う。しかし所得区分が「一般」なら本来の自己負担限度額は、図Bのa式から八万七千四百三十円となる。申請すれば窓口負担との差である二十一万二千五百七十円が還付される(Dの第1段階の②)。
 申請先は自分が所属する保険の窓口だ。自営業者などが加入している国民健康保険なら市区町村、主に中小企業の社員などが加入する政府管掌健康保険なら社会保険事務所、主に大企業の従業員が加入している組合管掌健康保険なら、会社の健保組合となる。
 三月まで七十歳未満はいったん窓口負担を支払い、後で申請して還付を受ける仕組みだった。しかし窓口負担をいったん払うことが大変な患者も多かったほか、膨大な申請漏れの可能性もあった。そこで四月から、七十歳未満の人の入院の場合も、自分の保険窓口で「限度額適用認定証」をもらい病院で提示すれば、最初から自己負担限度額の額を払うだけでよくなった。
 ただしこれも十分知られておらず、東京都のある病院では「認定証を持ってくるのは入院患者の一部の人だけ」という。それ以外の人は今まで通り窓口負担の額を払っている。制度を知らないままその後も申請せずに終わる人は今でもかなりいそうだ。
 政府管掌保険の場合「今年の春以降、本人に通知する仕組みにしている」(厚生労働省)。一方で国民健康保険に関し幾つかの市区町村に聞いたところ「きちんと通知している」「一切通知していない」など回答が分かれた。組合健保では通知しているところが多いが、対応はまちまちのようだ。「申請漏れを防ぐため、医療費が高額になったときは、自分の保険に必ず確認したい」(ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん)。

70歳以上も確認を

 制度そのものは知っていても「世帯合算という制度(Cの4)を使いこなせている人は少ない」(社会保険労務士の小野猛さん)。同一世帯で二万千円以上の自己負担が二件以上発生した場合は合算し、Bの計算式で出したその世帯の限度額を超えた金額を払い戻してくれる特例だ。
 例えばDの事例の場合、夫の通院、夫の入院、妻の通院はそれぞれ二万千円以上なので世帯合算の対象(子は二万千円未満なので対象外)になる。対象となる医療費の合計は百三十万円なので、世帯全体の自己負担額は九万四百三十円だ(Dの第2段階の計算式)。
 窓口で支払った金額は認定証を提示したかどうかで異なるが、どちらにせよ本来の世帯の限度額との差が還付される。ちなみにこの合算制度は「同一の人間が入院と通院でそれぞれ二万千円以上の自己負担があった場合も対称となる」(深田さん)。
 四月から導入された認定証のことを知っていて「自分はきちんと高額療養費を使いこなしている」と思っている人も、もう一段階、世帯合算によって還付される可能性があることを知っておこう。
 こうした制度があっても、高額な医療費が毎月続けば当然自己負担額の累計も大きくなるため「多数該当」という制度もある(図E)。過去一年以内の高額療養費の該当回数が四ヶ月以上になると、四ヶ月目からは所得に応じて自己負担限度額がさらに下がる(多数該当の限度額は表B下段)。ただ多数該当制度も申請が必要。「やはり自分で制度を勉強しておくことが重要」(深田さん)だ。
 ちなみに七十歳以上は三月以前から入院については窓口で最終的な自己負担限度額だけ払えば良くなっていたが、通院や世帯合算、多数該当制度に関しては、一貫して七十歳未満と同様に申請が必要だ。限度額算出の仕組みは七十歳未満とは別。例えば所得が「(高齢者の)一般」の区分なら、同一月の入院にかかった累計額のうち一万二千円を超える額は還付してくれる。「制度を使いこなす恩恵がさらに大きい」(小野さん)といえる。
(田村正之)
2007年11月4日  日本経済新聞



脳梗塞の前兆 一過性脳虚血発作 回復しても早めに治療

 脳の血管が詰まって、細胞が壊死し、死亡したり体機能がまひしたりする脳梗塞。このうち、短時間でまひなどの症状が回復する一過性脳虚血発作(TIA)は、後遺症がないだけに軽視されがちだ。しかし、放っておくと重度の脳梗塞を引き起こす可能性が高まるため、専門医は、一時的ではあってもまひなどの症状が出たら診断を受けるように呼び掛けている。

 脳梗塞やTIAは、加齢や高血糖、高脂血症などで動脈硬化が起き、血栓ができやすくなることが原因とされる。TIAの症状は、脳梗塞と同じく運動障害や視野の部分消失、失語などの言語障害が多いが、数分から十五分程度でその症状が消える点が特徴的だ。このため、発症後も医師の診察を受けないままの人が多い。
 日本神経学会理事の鈴木則宏慶応大医学部教授は「TIAは再発率が高く、しかも脳梗塞へと重病化しやすい。TIAの段階で生活習慣を改善し、予防薬の服用などの治療を受けてほしい」と早期対処の必要性を強調する。
 さらに、血栓は、脳梗塞だけではなく心筋梗塞や肺血栓塞栓症なども引き起こすため、TIAの患者はそれらの病気になる可能性も高い。いずれも、発作が起きると治療が難しく、死に至るケースが多い。
 血液や血管に関する一般向けの著作も多い東京医大八王子医療センターの高沢謙二教授は「詰まった場所が違うだけで、脳梗塞も心筋梗塞も肺血栓塞栓症も動脈硬化によって生じた血管の閉塞が原因。TIAが起きたら、心臓や肺などの循環器の専門医の診察も受けた方がいい」とアドバイスしている。



★「介護生活これで安心」(川上由里子著)
著者は介護支援専門員。肉親の介護に戸惑う家族へのアドバイスを盛り込んだ一冊。
「家で倒れた母に家族がすべきことは?」「妻を在宅介護することになったが、費用と体力に不安がある」−緊急事態に陥った家族に、Q&A形式で考えられる選択肢、押さえておかなければならないポイントなどを平易に解説する。
 介護付き有料老人ホームの紹介や、認知症になった高齢者への具体的な接し方も示されている。(小学館・一二六〇円)
静岡新聞



健康づくりに笑み筋体操 血糖値を抑制 生活習慣病防ぐ

笑うときに動く顔の筋肉を手でマッサージすることで、笑ったときと同じような心身の状態に近づけ、生活習慣病の予防やストレス解消に役立てようという「笑み筋体操」を筑波大などが考案、普及を進めている。住民の健康づくりにと、本格導入する自治体も出ている。
目や耳から入るさまざまな情報は、大脳の奥にあり、感情などをつかさどる大脳辺縁系で振り分けられる。
 「気持ちがいいという情報が神経回路に行くと、ドーパミンやセロトニンなどの快感物質が作り出されます。すると、気分がすっきりして前向きになるとともに、生理現象として表情に笑いが表れるのです」と、筑波大の林啓子助教授(成人看護学)。
 笑いには、病気を防ぐ免疫の作用を高めたり、体の調子を整えたりする効能があると報告されている。林助教授は、高血糖で多くの合併症が起きる糖尿病患者で、笑いの効果を実験した。

 五十代−六十代の約二十人に、食事後に漫才を四十分間見てもらい血糖値を調べたところ、平均で七十七ミリグラム上昇した。笑うところがない講義を前日に聞いてもらったときは同百二十三ミリグラムで、食後二時間の血糖値の上昇が抑えられたことが分かり、二〇〇三年に米国の糖尿病専門誌で発表、国内外で反響を呼んだ。
■神経回路を刺激
 長期的な効果を研究しようと、落語や漫才のビデオを患者に貸し毎日笑ってもらう実験に入ったが「一人では笑えない」「オチが分かると無理」などの指摘が出て断念。
 林助教授は「これをきっかけに、笑うときに動く筋肉を手で刺激して、通常とは逆の経路から笑いの神経回路を刺激し活発にすることを思い付いた。笑み筋の動きを良くして笑いやすい体質をつくり、笑いを引き出すのです」と話す。
 そして〇五年、名古屋学芸大の山内恵子講師(管理栄養学)らと考案したのが笑み筋体操だ。主な笑み筋は、目の周りの眼輪筋、ほおの大頬骨筋、口の周りの口輪筋で、体操ではこれらをリズム良く動かす。五種類あり①笑み筋を手で横に伸ばす「のばしていい顔」②親指と人さし指でほおの肉を丸く集めて回す「たこやきぐりぐり」③顔全体をこねるようにする「てこねトントン」−がよく行われる。
 座って手軽にでき、糖尿病が悪化して運動療法が難しい人でも取り組みやすく、患者向けの糖尿病教室に取り入れる医療機関もあるという。
■高齢化進展に備え
 埼玉県鶴ヶ島市は、健康づくり計画の中で「一日一回大きな声で笑おう」という目標を掲げ、〇五年十二月に笑み筋体操を導入。市民グループ「いっしょに笑いたい会」と協力し、高齢者施設や公民館で、笑いの出前として笑み筋体操の普及を進めている。
 同市保健センターの吉原正博所長は「今後高齢化が一気に進み生活習慣病が増えると予想され、今から準備が必要と考えています」と説明する。
 林助教授は「緊張するような試験や面接、会議の前にもやってほしい。笑み筋体操は治療法ではないが、将来は笑いの処方箋が出せるようになればと思います」とほほ笑んだ。
2007年  静岡新聞



病院の診療機能レベルダウン 「賢い患者」を目指そう

田舎の駅前クリニックでも、公的病院の診療機能のレベルダウンという「医療崩壊」の足音をひしひしと感じる今日このごろである。「○○病院では糖尿病の担当医が退職し、専門外来が閉鎖された」「△△病院は来年から循環器の医師はゼロになりそうだ」−。そんな声が、あちらこちらから聞こえてくる。
 「三時間待ちの三分診療でも、地元の病院で用が足りていたあのころはよかった」と慨嘆する時代が早晩やってくるかもしれない。その時には、裕福な「勝ち組」は国内の医療特区や海外の私費病院で手術を受け、大多数の「負け組」は不便をかこちつつ、重い足を引きずって遠くの病院まで通院する、ということになるのだろうか。

 県内でも私立病院を合併し、医師の数を確保して診療レベルを維持しようという動きがあるし、全国に目を向ければ、県立病院と私立病院の合併・合理化を既に終えた高知県、同じく県立と私立の合併を模索中の山形県など、水面下の動きは慌ただしい。赤字のひどかった福岡県は県立四病院すべてを民営化してしまった。住民・患者の立場からは、病院が減り不便になっただけ、という事例もあるようだ。
 保険証一枚あれば、貴賎貧富の差なく一定水準の診療を享受できる。WHO(世界保健機関)が医療サービス世界一と認め、日本が世界に誇れる医療システムである。多少の不便は増したとしても、どうしたら現状の保険診療の中核部分を維持できるのか、を真剣に考えるべき時期である。
 日本の公立病院は法律、条例、予算に縛られ、患者数−収益が増えても医師の数は増やせない。人手を増やさないまま、社会からの要請を次々と追加業務として積み増すから、真面目な医師ほど燃え尽き、立ち去っていく。さらには、いくら患者のためと身を粉にして働いても結果が悪ければ、よく悪口雑言、悪くすれば警察沙汰というありさまではなおのことである。
 医療崩壊寸前というこの難局に当たり、病院や行政に文句を言うだけでは事態は改善しない。政府の「医療政策」に、有権者・納税者として厳しく目を光らせることはむろん大切だ。しかし、それと同時に草の根のレベルで一人ひとりが「賢い患者」になるように務めてみませんか。
 自分の症状や悩みを短時間で医師に理解してもらうためのメモ、服用している薬が分かる「おくすり手帳」を持参する。まず近きより始めよ、である。病院のベッドや医師たちの時間、検査・治療機器など、限られた医療資産を効率よく利用し合う工夫と努力が今後ますます不可欠になると言えるだろう。


執筆者略歴
◇いとう・かずき氏
東京都出身。県立総合病院消化器科医長などを経て、02年に焼津市に「肝臓病・子育てよろず相談 伊東クリニック」を開業。専門は、難治性肝疾患(肝硬変・肝がん)の診断と治療。



アロマセラピー 痛みを緩和

緩和ケア(ホスピス)でアロマセラピーなど代替療法の必要性が認識される中、神山復生病院(御殿場市神山)のホスピス病棟では、県内でもいち早く専門のアロマセラピストによる定期的な施術を取り入れている。患者からは痛みやだるさが楽になり、精神的にも落ち着くようになったなどの声が上がっている。

神山復生病院はわが国初のハンセン病の病院として設立され、二〇〇二年には、がんなど終末期の患者と家族が快適に過ごせるホスピス病棟を新設した。
薬で痛みを和らげる処置やリハビリを行う中、ホスピス課の武井弥生医長が代替療法としてのアロマセラピーに注目。神奈川県内のホスピスのアロマセラピスト村田和乃さんと出会い、昨年十月からボランティアとして施術を依頼している。
アロマセラピーの資格を持つ村田さんが毎週火曜日、ホスピスの患者やハンセン病の元患者に施術する。ラベンダーやユーカリなど薬用植物のオイルを手につけ、患者の足や背中にゆっくりすり込んでいく。オイル成分には炎症の抑制や粘液の粘りを和らげる作用などがあるため、たんが出やすくなったり、よく眠れるなどの効果も表れている。
セラピーを定期的に受ける男性(七二)は「冬など背骨が痛むが、施術後は血行が良くなって楽になる。オイルの香りや手のぬくもりで気持ちもリラックスします」と話す。
日本ホスピス緩和ケア協会によると、緩和ケア施設は全国に約百四十カ所。音楽療法やアロマセラピーなど代替療法の研究も進み、緩和ケアの補完的な方法として浸透しつつあるという。県内では静岡がんセンターなど緩和ケア病棟を持つ施設が数ヵ所あり、看護の一環としてマッサージなどは行われているが、アロマセラピストなどの専門家は配置されていない。
欧米には、アロマセラピーが医療保険の対象になっている国もある。武井医長は「効果は分かっているが、日本では専門家の派遣などコストもかかり、導入が難しい状況もある」と指摘する。
2006年1月25日  静岡新聞



重病化が医療費増招く

受診抑制
 「誰もが、いつでも、どこでも」安心して医療を受けることができる国民皆保険制度は、言うまでもなく健康保険料と医療費(窓口負担)によって支えられている。
 ところが近年、国民健康保険(国保)の保険料未納だけでなく、医療費を払わない、あるいは払えない人も増えてきている。さらに、病気になっても治療を我慢する「受診抑制」も進んでいる。これは看過できない。

マイケル・ムーア監督が映画「シッコ」で鋭くメスを入れた米国の医療事情は決して遠い国のことではない。皆保険制度がなく、民間の保険会社が頼りの米国では、六人に一人が無保険、治療が受けられずに年間一万八千人が死んでいく。日本もまた、医療はお金次第の国にしてはならない。
 静岡県立三病院(総合、こころの医療センター、こども)では、一年以上支払いのない診療費未収金が、昨年度末までの累計で一億九千七百万円にも上がった。
 明確な理由がないのに払わないという人が58%もいた。もちろん、支払い能力があるのに払わない「逃げ得」を放置するわけにはいかない。だが、最も多いのは収入が少ないため医療費の全額または一部が払えないケースである。高齢者だけでなく、若い世代にも増えてきている。
 所得が少なく生活が苦しい場合、生活保護で医療扶助を受けることができる。実は国が負担する生活保護費約一兆九千五百億円(二〇〇七年度予算ベース)のうち約五割を医療扶助が占めている。
 問題は、生活保護を受けるまでに至らない低所得者の間でも受診抑制が起きていることだ。
 厚生労働省調査では、国保料滞納世帯が昨年、四百八十万五千世帯を超えた。一年以上の滞納者には、保険証を取り上げて「資格証明書」を出したり、「短期保険証」で猶予を与えたりしているが、収納率向上にはつながっていない。
 年収二百万円以下の人が一千万人を超えたといわれる。日雇い、フリーターなども依然多く、二十−三十代のワーキングプアが増えている。生活費に余裕がなく、「払いたくても払えない」という実態は、社会全体の問題として深刻に受け止めなければならない。
 セーフティーネットからこぼれ落ちる人をどう救うか。国保の財源も国庫補助を減らし続け、国民に負担を押し付けてきたが、これも限界に来ている。保険料の算定見直しや、個々の事情に合わせた減免措置の拡大も考えなければならない。これ以上、受診抑制が進めば、一段と重病化し医療費を増やすという逆効果を生んでしまう。
2007年10月24日  静岡新聞



診療報酬に成果主義導入・厚労省方針、まずリハビリ病棟で

厚生労働省は医師の医療行為に払う診療報酬に、初めて成果主義を導入する方針を固めた。まず病状回復期のリハビリ病棟への報酬点数を、病状の改善度合いに応じて加減する。11月にも中央社会保険医療協議会(中医協)に具体的な検討を求める。リハビリ病棟への入院患者を減らし、膨張する医療費を抑える狙いだ。ただ、改善度合いを評価する基準の策定や、誰が評価するかなどを巡って調整が難航する可能性もある。

 診療報酬は医療行為ごとに個別に点数が決まっており、病状の改善度合いを反映する仕組みにはなっていない。医療費増に歯止めをかけるため、見直しに乗り出す。
2007年10月4日  日本経済新聞



05年度介護サービス利用 過去最高440万人

 厚生労働省が22日発表した2005年度介護給付費実態調査によると、1年間で1度でも介護サービスを利用したことのある人は439万8千人で過去最高となり、前年度より26万2千人、6.3%増加した。

 居宅サービスでは、伸びが目立ったのは認知症高齢者グループホームで、28.0%増の14万3千人。このほか通所介護が147万8千人、福祉用具貸与150万8千人とそれぞれ9%近くのびた。訪問介護は4.7%増の169万5千人。
 一方、訪問入浴介護や短期入所療養介護は利用者が減った。
施設サービスでは、特別養護老人ホームが49万3千人、老人保健施設は47万人で、それぞれ7〜5%程度伸びたが、介護型療養病床は4.3%減の21万1千人となった。
 利用が減少したサービスについて厚労省は「実施施設が減ったことなどが原因」としている。
 また、介護保険の介護サービスを利用している要介護高齢者の1年後の要介護区分は、4年連続で悪化する結果となっている。
2006年9月23日  静岡新聞